【東広島市・近畿大学工学部谷川大輔研究室「星降るテラスプロジェクト」】学生たちの手で作った場所は、やがて夢のスタート地点に。

photographs & text by Sayaka Okita

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屋根が浮いている! 田んぼの中に突如現れる一風変わった古民家に驚く。大きなガラスの建て具が屋根を支えている。建物の前半分は土間になっていて、そのガラス建て具を隔てて地面と繋がっている。外なのか内なのかわからなくなるような、そんな感覚。田舎にある古民家としては異質なはずなんだけど、一方で風景に溶け込むようにそこに在る。東広島市福富町にある改修された古民家、「星降るテラス」だ。その名の通り、この場所は夜空の星が美しい場所だそうだ。地元の人がその名をつけた。
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2015年に、近畿大学工学部の谷川大輔准教授と、そのゼミの学生が改修を始めた「星降るテラスプロジェクト」。谷川准教授は、田舎暮らしに憧れ東京から引っ越してきて、居住目的でこの古民家を購入した。同時に、伝統工法を実際に目にできるため、建築の技術を学ぶ学生にとってもよい学びの場となると考え、ゼミで改修することにした。

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大きな改修は一通り終わった。天井を抜いて、床をはいで土間を作った。ポイントは、あえて段差をつけてある床だ。もっとも高い部分、次に低くなっている部分、そして土間。この建物を外から見てみる。すると、周りの田んぼと家の段差が連続しているように見える。これが「自然とつながる」秘密の一つだ。
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また、湿気や虫で朽ちていた柱は、大工の職人が昔ながらの工法で継いだ。「教科書では学べないことが多い。私もこの継ぎ方を実際に見たのは初めて」と谷川准教授。ゼミの学生も「こんなやり方があったのか」と感動した。土台を直した後は、今回のように一般の人も改修ワークショップに参加することができる。この日は、家の周りの草抜き、天井のペンキ塗りなどを行った。
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この建物は何に使うかは、いまも明確に決まっていない。農業体験ができるスペースにしたり、空き家再生の拠点になったり、ワークショップの現場であったり、用途は様々だ。しかし「その場だけ」「その時だけ」で終わる取り組みにしたくないと谷川准教授は話す。「例えば子育てとか、地域づくりとか、この建物を中心に『暮らし』を継続させたい」。建物を建てるだけでは意味がない。建物を建てるモチベーション、建てた後にどう使うか考えることが大切だという。
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そんな谷川准教授の思いを引き継ぐのが、守本怜矢さん(23)。現在、同大大学院1年生だ。当初から「ただのハコモノにしてはならない」という思いがあった。古民家を改修しても、それを何に使うかを考えないといけない。この「星降るテラス」は取り組みが注目され助成金がつき、急ピッチで進む工事に「中身が追いついていない」という危機感を持った。それと同時に、「仕組みづくり+建築」という構想を抱くようになった。
もともと地域づくりに興味があった守本さんは、驚きの行動に出る。自分も福富町に古民家を借りたのだ。そこには自分や仲間が設計をしたり、模型を置いたりする「ケ」の場所としての機能を持たせる。そして「星降るテラス」が「ハレ」の場所。人が集まれば、あとは流れをつくるだけだ。福富町の空き家を改修し、使い方や建物のよさなどを借り手に提案する。一軒ずつ魅力づくりに携わり、「たのしそう!」を増やし、空き家を埋めていく。このたび、学生ながら起業も果たした。
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谷川准教授は「私にとっては憧れの田舎暮らしですが、学生にはまずは広い視野を培ってほしい。一旦都会に出るのもいい。そうして社会経験を積んで、田舎のよさや、本当の豊かさに気づいて、またこの場所に戻ってきてくれれば嬉しい」と話す。今後はクラウドファンディングなどで資金を集め、五右衛門風呂やかまどを作る予定だ。壊して、再生して、溶け込んで。そんな「星降るテラス」は、若者の夢のスタート地点でもあった。
 

〈次回の開催予定〉

11月18日(土)・19日(日) ふくとみ・秋の収穫祭

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9月4日までクラウドファンディングも実施中!

 

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