府中 伝統から紡がれる未来。
備後地域は下駄、琴、畳表、織物など古くからものづくりが盛んなところ。中でも府中市は高級家具の産地として知られている。高橋工芸は30年間基本デザインの変わらない家具がある一方で、トヨタのオファーに応じて高級クルーザーの内装を手がけたり、オーダー家具や古いタンスの再生に取り組んだりと挑戦を続けている。
ひろしゃまvol.4-1
お話をしていただいたのは
備後地域は下駄、琴、畳表、織物など古くからものづくりが盛んなところ。中でも府中市は高級家具の産地として知られている。高橋工芸は30年間基本デザインの変わらない家具がある一方で、トヨタのオファーに応じて高級クルーザーの内装を手がけたり、オーダー家具や古いタンスの再生に取り組んだりと挑戦を続けている。
「伝統とは、時代に応じたものづくりに対するチャレンジ精神」と代表取締役・高橋正美さん。高橋工芸では家具生産を基盤としながらも、新しい仕事の依頼をチャンスと捉え、常に既存の技術や製品に囚われないものづくりをしている。日々、一人一人の顧客の希望に真摯に向き合い、技術により一層磨きをかけることの積み重ねが、まさに伝統を形づくっている。
高橋工芸のものづくりには、「本当に良いもの」を通して「愛着がわく暮らし」を届けたいという想いが込められている。ものがあふれ、使い捨てが当たり前となった現代だからこそ、一つ一つの家具に作り手と使い手の双方が「いかに心を込められるか」が商品の価値をつくると高橋さんは考えている。「想いが詰まった家具を通して、豊かな生活を送ってほしい」。
伝統をつないでいくためには、次の世代を担う若者の雇用が必要不可欠となる。それには、「今を担う世代が「夢」のある仕事に取り組むことで、希望が持てる未来を示していくことが重要だ」と高橋さんは語る。クルーザー内装の他、東京・青山でのショップ展開、ヨーロッパの展示会への参加などに積極的に挑戦するのは、そうした理由も大きい。地元の小学生の社会科見学の受け入れを行うなど、地域に開けた活動も大切にしている。
伝統をつなぐために常に柔軟であり続ける高橋工芸。消費者である私達はどうあるべきか。ものの価値を決めるのは値段だけではない。自分たちの選択が次につながることにもなると感じた。