ひろしゃま

農業という文化

ひろしゃまVol.13-2

お話をしていただいたのは

延安さんの代表的な活動に「サイエンス・カフェ」がある。自然観察をしながら、馴染みの薄い、しかし大事な存在である虫や植物のことや、それらが育つのことなどの話題を気楽に聴いてもらい興味を持ってもらう取組だ。「科学」が苦手でも、参加すれば延安さんの虫や植物たちへの愛情深い視線に引き込まれるに違いない。今回も、生き物への愛情に満ちた少年のような眼差しで農業や自然の営みについて語って下さった。

昆虫も動植物も、 豊かに残るフィールド

延安さんの活動フィールドである世羅町は、江の川と芦田川の源流の地であり、湿地やため池などの豊かな自然も多く残っている。そこには希少な動植物が多く生息し、地域の人がその保全環境づくりに取り組み、人と自然を大切にする心を育んでいる。
延安さんは、そうした取組の拠点の一つである「せら夢公園」の「自然観察園」の管理責任者になって2年になる。その前は、長年にわたって尾道市の農協に勤務し、農薬を使わず生き物を育てる米づくりを推奨していた。また同時に、昆虫類にも造詣が深かったこともあり、満を持してこの職場に移られたのだ。

生き物も育てる米づくりこそ 本来の農業

最近、無農薬栽培や有機農法などが盛んに推進されている。実はそれだけであればアメリカのような広大な土地の方が実践しやすいのだと言う。
「『安全と安心』だけが農業の目的なのか?」
そう強く感じている延安さんは、「農業の価値」について力強く語る。
「農業とは、即ち古代より継承されてきた美しい風景のことだと思うんです。水をたたえた田んぼ、蛙の声、青い夏の田んぼ、黄金色の田と赤とんぼ、案山子など、あらゆる四季折々の風景が田んぼと共生しています。だからこそ、農業は植物と生き物が一体となってこそのものなんです。」
とんぼや蝶が飛び交い、子ども達が田畑で遊び、動植物と触れ合い共に育つことが、即ち「農業」であり「農業という文化」だと言う。

全ての動植物を理解し、 大切にし、共生する 

延安さんの自然観察では、名前も知られていない虫の話がよく取り上げられる。せら夢公園自然観察園ブログを覗くと、虫たちが実に愛されて登場してくる。時には害虫となり田畑を荒らす虫たちだが、その存在もあってこその自然循環であり、むやみに駆除すべきではないのだと言う。ただし外来種は良くない働きをするらしいので、虫の世界でも地産地消が望ましいということかもしれない。
また、自然観察園では、名も知れぬ虫と同時に「ヒョウモンモドキ」をはじめとする絶滅の危機に瀕する美しい虫たちも大切にされている。蝶とトンボの中間のような「チョウトンボ」、そして湿地に自生する美しくも珍しい植物。害虫も益虫も含め、自然界に存在する全ての動植物たちを理解し、大切にすることによって自然界の循環が成り立ち、理想の農業が成立すると延安さんは確信している。

農業という文化、 里山の未来を守るため

延安さんの活動は自然界、人間界の全てに通じるものだと感じる。生きとし生けるものが自然のままで共生すること、豊かな自然を守ること、子どもたちが自然の中で動植物と共に育つこと。こうした姿は、これから私たちが目指す未来の一つの形ではないだろうか。
かつての自然、稲作と共にある風景や生き物は努めて保護していかないと守りづらい時代になっている。延安さんはますます使命感を感じて、今後も様々な保護・育成活動を繰り広げていくはずだ。なにより少年のような笑顔の魅力的な延安さんに、今後もぜひ注目してほしい!

農業という文化
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取材したのは

  • 小島朋子(「音楽と風景」主宰)