ひろしゃま

東広島で“まち*ひと*じぶん”とつながる

ひろしゃまvol.19

お話をしていただいたのは

のどかな田園風景や赤い屋根瓦を眺め、広島駅から山陽本線に揺られること

1時間、降り立った駅は河内(こうち)。 切符を入れる箱とICの自動改札機がある無人駅です。 思わずコートを脱いでしまう陽気の小正月過ぎに、 駅徒歩1分という好立地の「こうちプラス」にお邪魔しました。
東広島市河内町のまちづくりに携わり3年目のアーティスト原さん、 2年目の地域おこし協力隊の上野さん、 そして志和で活動を始めたばかりの地域おこし協力隊の森口さんと 濃密なひと時を過ごしたのです。

偶然と直感に導かれて

つじ:まちづくりに興味がある人が増えてきているなと感じています。まずはじめにみなさんにお伺いしたいのは、「なぜこの東広島を活動エリアに選んだのか?」です。
上野:私の生まれは三次だけど、高校は東広島だったし、大学を出てからは東広島でFMラジオの仕事をしていて、協力隊としては二年前に、たまたま東広島の河内に配属になったから。
原:まちがいいからですね。大学で東広島に来て、芸能フェスティバルや文化展などを河内では自主的に行っているって知ったわけですよ。「ああ、なんだかここのエネルギーはすごいな」って感じて。将来は絵を描いて生きていこうと思っていたから、ここならばできるんじゃないのかなって。
森口:私は東京生まれ東京育ちで大好きな人たちに囲まれて、渋谷や新宿でアパレルの店長を任されていたんですが、たまたま地域おこし協力隊の募集で志和のことを知って、なんか行った方がいいって気がしたんです。
つじ:偶然という何かに導かれたのですね。実際に活動を始めてから感じたまちの印象はどうですか?

漠然と違和感に気づく

原 :一緒に成長しているような気がする。僕が動くとまちが動くような。
森口:私は、何の予備知識もなく飛び込んで行ったから、ちょっと壁にぶつかっていて。どうしても協力隊っていろんな人から様々な要望を言われるので、何とか対応しようとするんですが、自分の限界もあって。だんだん、私ってなんでここに居るんだろうって疑問に思えてきて。
原 :僕は、協力隊という肩書きだと、地域へ入るときにどうしてもよそ者として見られ、まちの人と深いところでつながれずに、疲れてしまうかもしれないと考えて、協力隊は選ばなかった。
上野:まさに一年前の私が感じていたことみたい。どうしても協力隊という使命感で動かざるをえないし、外から何かしらの責任を背負わされているようでプレッシャーを感じていた。でも今は「なぜそれを行うのか?」という言葉を大事にするようにして、周りのためじゃなくて自分のためにやろうとシフトしたの。
森口:「なぜ?」を大事にする?
上野:そう。以前、参加した地域での事業づくりの研修の中で、メンターも講師もみんなが大事にしていて。「なぜ自分はまちづくりを行うのか?」自分をとことん掘り下げていくと、自分が本当に好きなことがわかってね。それを知っていたらいざというときに強い。
森口:勝手に自分で作っていた「こうスベキ」というマイルールは捨てて、好きなこと・やりたいことを追求したくなりますね。
つじ:やはり動くと見えてくる世界が変わるんですね。上野さん、そういえばここ「こうちプラス」はどういう経緯でできたんですか?

あえて場はつくらない

上野:元々、空き物件の事業化に興味があって、駅近、一階がスナックという良物件が空いていたから。トイレとキッチンの蛇口以外はなにもなかったんですが(笑)。そこから不思議とこれが必要だろうなと思うものが集まって来たというか。
森口:引き寄せみたいな?
上野:そうそう、河内は面白い人が多くて。この場に必要なものを持って、ふらっとやってくる。
森口:ふらっと? 上野 電車の待ち時間がある人とか、仲間みたいな人が、ふらっと。開いていたら上がっていいよってオープンにしていることもあって。
つじ:ふらっと来てくれるのがいいですね。そのための工夫とかってありますか?
上野:東京の両国にある「喫茶ランドリー」にものすごく影響を受けていて。特に、あげたいものを無料で振る舞うという「あり方」に。雑多で入りやすいほうがいいかなと思って、オシャレな感じじゃなく、いい意味でちょっとダサくしています。
つじ:喫茶ランドリーと言えば、コインランドリーだけではなくカフェもあり、お店全体を地域の人にオープンにして使ってもらっているという素敵な場ですよね。
上野:そう!だからここもルールを設けていない。自由が好きだし、なんていうかコミュニティは作るものじゃなくて起こるものじゃないですか?

各々が次のステージへ

つじ:最後に今後の展望などを教えてください。
原:四月からここの鍵当番になるけれど、自分の意思で動き、できることはするけれど、特別なことは特に何もしない。
森口:するしないのさじ加減が難しくないですか?
原:起こって欲しいと意図的に仕掛けてもそうはならないから、骨格だけは用意して、残りはまちの人に任せる。
上野:それだけのつながりがあるんだと思う。
森口:私は、大好きなモノゴトから離れて、最高なものを見つけようと思って来たけれど、今をあまり楽しめていない自分に気がついた。だから、自分を深掘りして、改めて自分を見つけたい。輝ける女性が喜んで活躍できる場、面白い人がゆるく集まる場として、志和で休業中の「大和花」という古民家カフェの再生を手がけていきたい。
上野:「欲しい暮らしをつくる。自分のまちは自分でつくる。」という言葉がもう大好きで、これからもどうやったらできるのかを考えて、できる範囲でやっていく。ここを離れることにはなるけれども、つながりながらできることを行っていきます。

編集後記

 無理なく自然体でいられるまち――人とのつながり――を大切にして、欲しい暮らしを自分たちの手で紡いでいく。決して、ヨソやソトからの押し付けやお仕着せではなくて。それは偽らざる自分自身ときちんと向き合い深掘りしたからこそ、気がついたことだと感じます。理想を目指し叶えている様子を、場づくりのヒントを、この「こうちプラス」で存分に感じられたとても贅沢な時間でした。決してビジネスライクな地域ビジネスではなくて、地域が潤い幸せになる持続可能な働き方、「地粋ハピネス」。そんな言葉が思い浮かぶのです。

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取材したのは

  • つじ りゆういち(地粋発掘ライター/つながり研究家)